車のバッテリーは、さまざまな素材で構成され、それぞれが電力の蓄電・供給に重要な役割を果たしています。多くの車で使用される鉛蓄電池のほか、近年はハイブリッド車や電気自動車向けの高性能バッテリーも登場しています。本記事では、車のバッテリーに使用される代表的な素材とその特徴について解説します。

車のバッテリーの主要な素材

鉛（Lead）

車のバッテリーで広く使われる鉛蓄電池には、正極板に酸化鉛（PbO₂）、負極板に鉛（Pb）が使用されています。鉛は化学反応によって電気を生成するのに優れており、再利用が可能で環境面でもリサイクルが進んでいます。

特徴

• 高い放電性能と優れた耐久性
• 再利用が容易でリサイクル率が高い
• 重量が重く、鉛自体は人体や環境に有害なため適切な管理が必要

使用例

• 開放型バッテリー（メンテナンスが必要なタイプ）
• 密閉型バッテリー（メンテナンスフリー）

希硫酸（Sulfuric Acid）

鉛バッテリーの電解液には希硫酸が使用されます。正極と負極の間で化学反応を促進し、電流を生み出します。電解液はバッテリーの寿命や性能に大きく影響を与えます。

特徴

• 効率的に電気を生成するための媒介
• 腐食性があり、皮膚や金属への直接の接触を避ける必要がある

使用例

• 鉛蓄電池全般

ガラスマット（AGM：Absorbent Glass Mat）

AGMバッテリーでは、ガラス繊維のマットが電解液を吸収し、保持します。これにより液漏れを防ぎ、耐震性が向上します。アイドリングストップ車に多く使われるほか、高い放電・充電性能を求められる車両にも採用されています。

特徴

• 液漏れしないため安全性が高い
• 高頻度な充放電に耐え、振動にも強い
• 通常の鉛バッテリーに比べ価格が高い

使用例

• アイドリングストップ車や電力消費の大きい車両

ポリプロピレン（Polypropylene）

バッテリーのケースには、**ポリプロピレン（PP）**という軽量で耐久性の高いプラスチック素材が使われています。内部の電解液や鉛が車体に触れるのを防ぐための重要なパーツです。

特徴

• 軽量で耐衝撃性・耐熱性が高い
• 腐食に強く、車体への液漏れリスクを低減

使用例

• 鉛蓄電池やAGMバッテリーの外装

リチウムイオン（Lithium-ion）

ハイブリッド車（HEV）や電気自動車（EV）では、リチウムイオンバッテリーが使用されます。鉛バッテリーに比べて高いエネルギー密度を持ち、軽量で充放電効率も良好です。

特徴

• 軽量で高いエネルギー密度
• 長寿命だが、高温環境に弱く管理が必要
• 高価だが、電気自動車の普及でコスト低減が進む

使用例

• ハイブリッド車（HEV）、電気自動車（EV）

まとめ

車のバッテリーは、鉛、希硫酸、ガラスマット、ポリプロピレン、リチウムなど、さまざまな素材で構成されています。それぞれが電力の生成や安全性の確保、耐久性の向上に寄与しています。一般的な乗用車には鉛蓄電池が多く使われていますが、ハイブリッド車や電気自動車にはリチウムイオンバッテリーが採用されるなど、用途によって素材や構造が異なります。正しいメンテナンスと管理でバッテリーの性能を維持し、長く安全に使いましょう。